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2021年 3月 3日 笹本先生による物理講座③

こんにちは!担任助手3年の笹本です。本日のブログは、物理講座③ということで、前回の続きで、力学量についてお話していきます!

⑤力学量

 

④までが基本的ですが、高校物理では力学量として、以下の2つを学びます。

・運動量(向き付きの物理量)p=mv

・運動エネルギー(向きなしの物理量) K=1/2mv²

この2つの力学量が満たす関係式は、運動方程式と同等な式だと思ってくれればいいです。(実際に、これら2つの力学量は、運動方程式を変形することにより得ることができます。)

 ma=F

ここで、もう一度初心に戻り、運動方程式を眺めてみましょう。運動方程式は、

という式ですが、この式の主張は、

『力Fが作用したことにより、加速度aが生じた』

あるいは

『加速度aが生じるのは、力Sが作用したからだ』

と読むことができます。

つまり、原因:力が作用する 結果:物体に加速度が生じる

という因果関係を表現しているのです。(このことから、運動方程式のことを運動の因果律ともいいます。)

 

この因果関係を別表現した際に生じる物理量こそ、力学量と呼ばれる運動量と運動エネルギーなのです。そして、これら力学量は、因果関係でいう“結果”に対応します。

従って、「〇〇が原因となって、運動量が生じた(変化した)」「〇〇が原因となって、運動エネルギ―が生じた(変化した)」という表現になります。それでは、それぞれの原因は一体何と呼ばれる物理量なのでしょうか?

それは、『力積』(運動量変化の原因)・『仕事』(運動エネルギ―変化の原因)と呼ばれる物理量です。

 

ここまでの話をまとめると、こうなります。(ここまでの話がややこしくて?となってしまった人はこのまとめの部分だけでも頭の片隅に置いておいてください。)

 

⭐︎⭐︎すごく大事なまとめ⭐︎⭐︎

『力Fが作用したことにより、加速度aが生じた』という運動方程式は、以下の二つの別解釈を持っている。

『力積Iが加わることにより、運動量pが変化した』

『仕事Wが加わることにより、運動エネルギ―Kが変化した』

ここで、少し疑問に思う人がいると思います。なぜ運動方程式の別解釈が必要か?という疑問です。つまり、運動方程式が分かれば、そこから加速度が分かり、速度・位置の情報を手に入れることができるので、別表現はいらないと思ってしまうのです。これに対する答えは2つあります。

 

まず1つ目は、力学量(運動量・運動エネルギ―)を用いたほうが楽に問題が解けるケースが多くあるからです。気づいている人もいるかと思いますが、運動方程式から、速度や位置の情報を出すためには、いったん加速度を求めるという作業を挟むことになります。(そもそも運動方程式が加速度に対する方程式なので。)一方で、力学量(運動量・運動エネルギ―)から速度や位置の情報は、ダイレクトに出すことができます。従って、回りくどくなく解くことができるのです。これが、力学量(運動量・運動方程式)を使う理由の一つです。

 

2つ目の理由は、運動方程式から加速度が分かったとしても、速度や位置の情報を得ることができないことがあるからです。そんなことを言われると②で述べた「加速度さえ分かってしまえば、その物体の速度の情報、位置の情報が分かってしまう!!」というまとめに反するように感じる人もいるかと思います。しかし、思い返してみると②は加速度が一定のときの話でした。つまり、加速度から速度や位置の情報を得られる運動は、加速度が一定のときだったのです。例えば、加速度が時間によって変動する運動の場合、いくら加速度が求まったとしても、速度や位置の情報は得ることができません。(例としては、⑧で述べる非等速円運動です。非等速円運動では速度の情報を求める際に運動エネルギ―と仕事の関係を利用します。)

 

最後に特筆すべき注意点は、運動量が向きつきの物理量であることです。(もちろんその原因である力積も向き付きの物理量です。)

本日の内容はここまでです!長くなってしまいましたが、これで力学量の紹介を終わりにします。

次回の物理講座は3月2日。力学的エネルギー保存の法則についてお話します!